★活動内容
◆事例1 〜残業代2年間分の遡り請求〜
問題発生の背景
S社は各年度における事業予算の中で人件費の割合を確実に計上するために、
毎月変動する残業代を固定給として支給したいと考え、
従業員の給与に固定残業代を含めた年俸制に移行させた。
年俸制になるまでは毎月の残業時間を計算して支給していたが、
年俸制に移行する事業年度からは、それまでの過去の年間平均残業手当を計算し、
それを含めた年俸額として決定した。
年俸制といっても年棒額を12等分して毎月固定給与として支払うものであり、
単純に残業手当が固定化したというものであった。
固定残業手当の名称は特別手当という名称で、移行の際に全従業員に対して個別に説明をしていたが、
特に同意書等は交わさず、また賃金規程の変更もせずに数年が経過していた。
その後、業績の悪化により事業予算を大幅に削減しなければならない状態になり、
数名のリストラ候補者が選出された。候補者個別に対して業績悪化の経緯と今後の会社方針を説明してみたが、
たった一人だけ同意をしない従業員が現れた。
何度も説明を試みたが同意に至らず、
最終的には退職金に上乗せ金を数か月計上することで渋々退職合意書を交わすことになった。
退職後しばらくして、2年間の残業代(約200万円)と在籍していた期間の賞与を支払う旨の内容証明が郵送され、
当事務所に対応の要請が入った。
取り組み内容
当事務所はこの問題を解決するために、
@タイムカードにおける過去2年間の実際の残業代計算、
A年俸制に移行した際に従業員(他の従業員も含む)へ行った説明の詳細内容のヒアリング、
B現在の年俸制度と現状の賃金規程との整合性を調べることに着手した。
その後、当該事案で争った場合に企業側が相当不利であること、
最悪の事態(裁判)になった場合は相手方が掲示している金額を全額支払わなければならないことの同意をとり、
数回にわたり、内容証明に対する回答書を相手方に郵送した。
回答書の内容としては、
@年俸制の移行時に労働者全員に個別説明をしていたこと、
A特別手当(見合い残業額を含めて支給)が年俸制移行前後に大幅に増額されていること、
B年俸制移行後に残業代が給与明細上は支払われなくなっていたにも関わらず何ら異議を唱えなかったこと、
C企業側で計算した時間外労働分として、特別手当で賄えていない未払い残業分が約20万円発生しており、
それについては和解と同時に支給すること、
D退職する際に企業側と退職合意書を取り交わしていたこと、
F賞与については支給日在籍要件が賃金規程に明記されていることを主張。
※支給日には当然退職していた。
約6ヶ月間のやり取り後、未払い残業代として約20万円を支払い和解成立となった。
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