★活動内容
◆事例4 〜高額手当が巻き起こした高額残業代〜
問題発生の背景
Z社は自動車部品専門メーカーで日本全国や世界にも自動車部品を提供している会社だ。
いわゆるバブルの頃については高級車が飛ぶように販売され、
それに伴い自動車部品も大変需要の高い時代であった。
当時の社員の賃金体系は基本給こそさほどの金額ではなかったが、
各種手当を高額にして、手当の数も少しずつ増やしていくという流れであった。
社長は景気の良さと人材流出の恐れから、手当の金額を高額にすることには抵抗がなかったが、
賃金規程や雇用契約書などの書面は何も準備していなかった。
バブルが弾けた頃から自動車部品の需要が少しずつ減少し始めた。
しかし、社員は今まで通りの生産ラインを行っていた為、
残業時間も以前と同じ長時間という状況が何年も続いていた。
賃金手当というのは、定義をきちんと明確化していないと基本給と同じ扱いとなることから、
社員の残業代は異常なほど高額になっていた。
つまり高額手当を支払いながら、その他に、その高額手当を基本給に含めた金額で残業代の単価を計算しなければならなかったのだ。
ひどい社員になると年収ベースで総額1千万円を超えていたのだ。
落ちていく売上と人材流出やモチベーション低下をどう乗り切るかがひっ迫した問題となり、
当事務所に依頼が入った。
取り組み内容
Z社には10年以上前に作られた古い賃金規程しかなく、
現状の賃金体系と大きくかけはなれていた。
全社員の給与明細を全て確認してみると、
現状では全ての手当を残業代の基本単価に含めなければならず、
社長の悩み通り高額な残業代を支払わなければならない状態であった。
残業時間を大幅に削減するにも、不景気時代に退職者がかなり出たため人員不足の状態でもあった。
このような状況で考えられることは、
真摯に社員に現状の説明を行うものが重要だと考え、
社長の根本的な考え方を変えなければならないと社長との話合いを何度も設けた。
社長はいわゆる職人気質で、プライドが高く、社員に頭を下げることができない性格であった。
社長と当事務所の二人三脚でこの問題を改善していくことを決心した後、
新しい就業規則と賃金規程を策定した。
その中でも一番大きな内容としては高額手当の定義を残業代の対価と明確化したのだ。
ただ、いきなり全てを定義替えすることは無理があったため、都合3年計画で段階的に行っていくことにしたのだ。
そして、これは賃金の不利益変更にあたるため、
社員個別に3〜5回の個別説明を行い、同意を全ての社員から貰う事が出来た。
社員も現状のZ社の状況は理解していたが、
社長とのコミュニケーション不足や気軽に話を出来ない問題からかなりのジレンマを抱えたことも分かり、
結果として労使の肩の力が抜けた効果も生まれた。
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